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- 各種発電方式のカーボンニュートラル化には様々な手法があり、例えば火力発電においては、CCS(CO2回収貯留)や、バイオマスへの燃料転換なども考えられます。これらの手法ごとに発電コストを評価・比較する方法としては、LCOE (Levelized Cost of Electricity:均等化発電原価)の評価が有効です。現在、カーボンニュートラル化に向けた発電方式について、様々な機関でLCOEの評価がなされています。
- 例えば、国際エネルギー機関(IEA)※1 が2021年10月に発表したレポート1)においては、2030年での石炭価格および炭素価格を想定した上で、日本国内での石炭火力発電におけるLCOEが約110USD/MWhとなるのに対して、サウジアラビア東岸から輸入されるブルーアンモニア(排出CO2をCCSで回収して天然ガスから製造されるアンモニア)の60%混焼では約140USD/MWhになると試算されており、アンモニア混焼による燃料費の増加がCO2排出費の削減によって相殺され、比較的小さな増加に留まることが指摘されています。
- これに対し、資源エネルギー庁では、2030年での国内の太陽光および風力発電(陸上・洋上共通)の目標価格を、それぞれ7円/kWhおよび8~9円/kWh(為替レート110円/USDとして、約60USD/MWhおよび約80USD/MWh)に設定しています2)。これらの再生エネルギーの目標価格は、上記のIAEの試算による石炭専焼およびアンモニア60%混焼時のLCOEよりも安価になっています。
- 一般に、LCOEは電源の平均寿命発電コストを評価するものであるため、実際は、場所・サイトや、電力需要変動による稼働率などを考慮して、最適な電源構成を考える必要があります。例えば、太陽光発電などの再生可能エネルギーが安価で安定供給可能であれば、それを導入することが正しい施策です。
- しかし、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)※2は、日本の再生可能エネルギーの状況について、利用可能な潜在的賦存量の内では設備投資が高額になる洋上風力が84%を占め、比較的低額な太陽光と陸上風力は合わせても総エネルギー需要の33%しかカバーできず、さらにこれらのほとんどが低質で稼働率が低い、という条件の特異的な厳しさを指摘しています3)。このことから、今後のエネルギー需要を国内の再生可能エネルギーのみで賄うという選択には、大きな困難さとリスクが伴うと考えられます。
- 従って、日本のように現状で石炭火力発電に多くを依存している国がカーボンニュートラルを目指す中で、供給力・調整力・エネルギーセキュリティも含めて考えた場合、火力発電への燃料アンモニア導入への転換は、非常に有力な選択肢の一つになると考えられます。燃料アンモニアは万能ではありませんが、重要なオプションの一つです。
※1「国際エネルギー機関(IEA)」: 経済協力開発機構(OECD)の枠内における、エネルギー安全保障の確保・経済成長・環境保護等について世界的な取組を進める国際機関。参加要件は備蓄基準(前年の当該国の1日当たり石油純輸入量の90日分)を満たすOECD加盟国で、現在31か国が加盟、11か国が協力。
※2「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」: 再生可能エネルギーを世界規模で普及促進する国際機関。2023年2月7日現在、世界の168か国が加盟。
1) International Energy Agency (IEA), “The Role of Low-Carbon Fuels in the Clean Energy Transitions of the Power Sector”, IEA Report, Oct. 2021
2) 資源エネルギー庁,「風力発電について」, 第63回調達価格等算定委員会 配布資料 (2020.11)
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/063_02_00.pdf
3) International Renewable Energy Agency (IRENA), “Global Hydrogen Trade to Meet the 1.5°C Climate Goal: Green Hydrogen Cost and Potential, Part 1: Trade Outlook for 2050 and Way Forward” (2022)
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